という事で今回は、写真素材を用いて手軽に背景を描く方法をまとめました。
こんな方におすすめ
- 背景が描けないと悩んでいる方
- 手軽に背景に挑戦してみたい方
本記事の内容
- 写真を背景イラスト風に加工する手順
- 写真加工のレイヤー構造
- 最低限おさえておくべきコツ
写真を使って背景を描くー。
フォトバッシュという技法で、主に映画・ゲーム業界のコンセプトアート制作において用いられています。
写真素材を背景の下地、もしくはテクスチャとして使うことで、0から手描きするより、手軽に・短時間で完成度の高いイラストを仕上げられるのが魅力。
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こちら1年前の背景…。なんか頑張ってなそれっぽい事やってます…;
恥ずかしながら僕は1年前まで背景めちゃくちゃ苦手でした。。
そこで取り組んだのがフォトバッシュ技法です!
↓
(そこから1年後の背景。)フォトバッシュ技法を使うことで、0から手描きすることに比べて背景のハードルがグッと下がります。
同時に、
- 背景の描き進め方
- 透視図法などの基礎知識
- 背景に必要な効果や演出の方法
を効率的に習得することができ、1年経った今では背景のお仕事が頂けるようにもなりました。
今回はそんな写真を使って背景を描く、また背景のレベルをアップする方法をまとめてみました!
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写真を使って背景を描く2つの方法
写真を使って背景を描く方法は大きく分けると2つあります。
- 1枚の写真をベースに描く方法(写真加工)
- 複数の写真を組み合わせて描く方法(フォトバッシュ)
写真を使って背景を描く最大のメリットは、短時間で背景を描くことができる点。
森など複雑な自然物や、手描きの場合はしっかりとパースを取る必要がある建物の作画の手間が省けることで、イメージをより直観的に・感覚的に表現することができると考えています。
1枚の写真をベースに描く方法
写真加工、レタッチと呼ばれる技法です。
映えるシチュエーション・良い構図の写真を用意できれば、短時間で魅力的な背景イラストに仕上げることができます。
イラストのメインのアピールポイントを決めて、その部分がより引き立つように加筆や光の効果などを加えていきます。
※逆にそれ以外の部分は情報量を削るなどして、画面内にメリハリを作るのがコツです。
■メリット
写真に加筆や効果を加えるだけで短時間で背景イラストを仕上げることができる点が最大のメリット。
構図やパースを取って0から手描きする手間が省けるため、初めて背景に挑戦する際におすすめです。
■デメリット
天候・構図・時間帯など、ある程度自由度が制限されてしまうことが難点。
理想のイラストを描く為に完璧に条件の合った写真を撮影するのは難しいこともあります。
(例:構図は完璧でも撮影日はあいにくの曇り空だった、等)
良くも悪くも、イラストの完成度はベースとなる1枚の写真次第、ということです。
複数の写真を組み合わせて描く方法
フォトバッシュと呼ばれる技法です。
一般にゲームや映画のコンセプトアートで使われるのがフォトバッシュです。
複数の写真を組み合わせることで表現の幅が広がるので、壮大な世界観の背景を描くのに向いています。
手描きで描くと非常に難しい複雑な背景も、写真を効果的に組み合わせることで短時間で完成させられます。
■メリット
複数の写真を素材として使うため、イメージ通りの背景を作れる点が魅力。
1枚の写真加工では元写真の風景に左右されますが、複数の写真を組み合わせるので自由度が各段に上がります。
天候を変えたり、モチーフを加えたり、理想のまったく新しい風景を作り、理想の世界観を描けます。
■デメリット
複数の写真を1枚の背景として整える難易度が高いと言えます。
当然写真ごとに色味・撮られた時間帯・構図・光の向きなどがバラバラなので、そのままではコラージュ画像状態になってしまいます。
パースに合わせて貼り合わせたり、色調補正機能を駆使して色味や明暗を調節する技術が求められます。
あとは背景に適した写真を複数枚用意する必要があるので、準備に時間が掛かるのも難点…
フリー素材サイトのPixabayやTextures.comなどで写真素材を集めておくと便利です!
写真がイラストになるまでの流れ
写真をイラストに変えていく大まかな制作工程を解説します。
イラストによって制作工程が微妙に前後することもありますが、基本は下記の流れで制作するとスムーズに描けます!
写真加工の工程は3つ
1枚の写真をベースに描く場合は、
- 写真の加筆(情報量を整理します。)
- 効果の演出(光や影、空気遠近感の演出をします。)
- キャラを描く
という工程。
写真を用意します。
構図や角度を変えられないため、いかに映える構図の写真を用意できるかが勝負です。
目立たせたいメイン部分は情報量を多めに残します。
それ以外の部分は簡略化しすることで、主役に視線を集めます。
別写真を使ってモチーフを加える場合は、この工程で別写真を貼り合わせます。
光や影の演出を加えます。
また色味を鮮やかにしたり、逆に彩度を落とすことで、特徴のあるイラストになります。
キャラを描く場合は、別途キャラを描き背景に配置します。
キャラにも光や影の効果を加えて背景に馴染ませます。
フォトバッシュの工程は6つ
複数の写真を組み合わせてまったく新しい風景を描く場合は、
- 構図のラフを描く
- 写真を貼りつける
- 色調補正機能で色味・明暗を合わせる
- 加筆する
- 効果を演出する
- キャラを加える
という工程。
写真加工に比べるとやることが多いですが1つ1つ進めていけば大丈夫です!
構図の大まかラフを描きます。
『どこにどんなモチーフを置くのか』『どんな場所か?』『光の向きは』を決めていきます。
ラフに合わせて写真のパーツを貼っていきます。
変形機能(Ctr+TまたはCommand+T)でパースに合わせます。
写真を貼り合わせただけでは色味や明るさがチグハグでコラージュ画像状態です…。
色調補正機能を使ってパーツの色味・明暗を1つずつ調節していきます。
全体の色味と明暗が統一できたら、写真同士のつなぎ目などを加筆して均していきます。
輪郭がパッキリする硬めのブラシが使いやすいです。
光や影、空気遠近感など効果の演出を加えます。
明暗の差をガッツリ出すことで、荘厳な背景になります。
キャラを描く場合は、別途キャラを描き背景に配置します。
キャラにも光や影の効果を加えて背景に馴染ませます。
写真をイラストに変えるコツは2つ
写真とイラスト。
同じ風景であっても、両者には違いがあります。
何をすれば”イラストらしくなる”のか?
コツをおさえることで、魅力的な背景イラストをスムーズに描くことができます。
写真をイラストに変える2つのコツ
- 情報量を簡略化する
- 特殊効果を演出する
写真加工のコツ①:情報量を簡略化する
情報量=描き込みの量のことです。
人の目は、情報量が多いところに視線が行く性質があります。
画面全体の情報量が同じ状態だと、視線が画面全体に散漫してしまいます。
しっかり描き込む部分と簡略化する部分を作ることで、主役に視線を集めることができます。
イラストでも情報量の取捨選択を意図的に行うことで、最も見せたいモチーフをより引き立てる感じです。
下図は一例。
写真の中で最も見せたい要素を決めます。上の写真の場合は、奥に夏らしい入道雲を描いて夏の感じを演出したいと考えました。
そこで奥に視線を集めるために、周囲の地面や壁の質感を簡略化して情報量を下げました。
また木陰を大げさに暗くすることで、夏の明るい空がより引き立つようにしています。
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☞ 近景
:絵の表現に応じて、詳細に描き込み/ぼかしを使い分ける
近景は画面内で一番手前にきます。最も大きく目に入りやすいため、基本的には詳細に描き込むと良いです。
写真のディテールを残しつつ、部分的に質感を削るなどするとバランスが良くなります。
一方近景を大きくぼかすことで距離感を表現する手法もあります。
写真でよくある技法で、奥行きを表現して中景に視線を誘導する効果があります。
☞ 中景
:場面の状況を説明する重要な要素
中景は画面のメインを占めることが多いです。
キャラを置く場合は中景に配置することでバランスの良い構図になります。
中景は背景全体の場面説明を担います。
基本的には写真の質感を生かしつつ、一部ごちゃごちゃした箇所を加筆して簡略化する程度でOKです。
☞ 遠景
:遠景はガッツリ情報量を減らす
風景では遠くにある物体ほどぼやけて細部は見えなくなります。
この性質を利用して、遠景は単色で塗りつぶして情報量を大きく減らします。
こんなに塗りつぶして大丈夫!?ってくらいガッツリやっちゃって大丈夫です!
描き込みの情報量に意図的に差を作ることで、近景・中景・遠景の奥行きがある背景イラストに仕上がります。
写真加工のコツ②:特殊効果を演出する
光の効果を加えたり、画面の色味を調整することで、写真がイラストに大変身します。
今回は厳選して、一気にイラストらしくなる特殊効果を3つ紹介します。
一気にイラストらしくなる効果演出3つ
- 光と影を加える
- 色味を調整する
- 空気遠近感を演出する
効果演出①:光と影を加える
光と影は風景の環境を大きく左右する要素。
人の目は明るい所に視線が行く性質があります。
そのため、目を惹くイラストを作る最も手っ取り早いコツは、明るい所と暗い所をはっきり分けること。
目を惹くイラストを作るポイントとして、他にも
- 描き込み量に差を作る
- 視線を誘導する構図作り
- メインを際立たせたり、全体の調和を図る配色
- 差し色を入れたり、彩度に差を付ける等の色調調整
…などなど、細かなテクニックがありますが、最も手軽でかつ効果が大きいのが明るい所と暗い所をはっきり分けることです。
主に使用するのは加算(発光)と乗算レイヤー。
加算(発光)
塗った箇所が光ったように明るくなります。
太陽や火、電球など強い光の表現に用います。
乗算
塗った箇所が暗くなります。主に影を描く時に使います。
多分一番よく使うレイヤー。
ふわっと光の効果を加えたり、日差しを描く光の描写。
そして、暗い所を作る影の描写。
効果演出②:色味を調整する
人はものに対して色のイメージを持っています。
(例えば空や水なら青色、桜は鮮やかなピンク…といった具合です。)
でも現実世界の実際の水は青色ではないし、桜も白寄りの薄いピンクをしています。
そこで人が持つ色のイメージを強調することで、より魅力的な風景に仕上げることができます。
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実例としてアニメ風背景の作り方を紹介します。
今回使うのはこちらの海の写真。
撮影した日があいにくの曇りだったため、全体的に灰色をしています…。
ここに効果レイヤーを足して鮮やかな海に加工していきます!
❶「乗算」で青色の下地を作る。
写真のレイヤーの上に新規レイヤーを作成、レイヤーモードを乗算に変更します。
グラデーションツール (モードは描画色から透明色)を使うと自然に色を乗せれます。
画面下から矢印の方向にペンを動かし、海全体に青色のグラデーションを掛けました。
★今回は海のイメージを強化するため、青系の色を使いました。
乗算
暗く・濃くできる効果レイヤーです。
影を塗るのに使うのが主な用途ですが、今回のように色味の下地を作るのにも使えます。
❷「オーバーレイ」で色味を鮮やかにする。
一番上に新規レイヤーを作成、レイヤーモードをオーバーレイに変更します。
グラデーションツール (モードは昼空)を使います。
元々青空を簡単に作れるグラデーションモードですが、海にも使えます!
海全体が鮮やかになり一気にイラストらしくなりました!
オーバーレイ
明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗くする機能。
色味を鮮やかにしたり、特定の色味を強くしたり、全体に特定の色味を乗せたりできます。
➌波を加筆する。
一番上に新規レイヤーを作成します。今回はレイヤーモードは通常でいきます。
白っぽい水色で波を加筆します。太陽の反射を描いてあげるとそれっぽく仕上がります。
❹ついでに空も色を変える。
選択ツールで空の部分を囲います。
塗りつぶしのボタンを押して、空を塗りつぶします。
曇り空で空が白すぎたので、今回は濃い青色にしました。
空を塗りつぶしたレイヤーの上に新規レイヤーを1枚作成し、クリッピングします。
これで空の部分のみに描くことができ、海の部分にはみ出さなくなります。
先ほど使用したグラデーションツール (モードは描画色から透明色)を使います。
矢印の方向にペンを動かし、空にグラデーションを掛けます。
-300x130.jpg)
効果演出③:空気遠近感を演出する
空気遠近感というのは、遠くの山やビルが青みがかって見える現象のことです。
これは空気の層が重なることが原因で、遠くの物ほど薄く青みがかってぼやけて見えます。
背景は、【近景】【中景】【遠景】の3つを作ることで、奥行きのある立体的なイラストに仕上げることができます。
”遠くの物ほど青みがかってぼやける”空気遠近感の演出をほどこすことで、自然と奥行き(距離感)を表現できる訳ですね。
現実世界の空気遠近感は薄っすら青く霞む程度ですが、あえて大胆に青色を入れることで、アニメでよく見る鮮やかで華やかな背景に仕上がります。
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使用するのはスクリーンレイヤーです。(もしくは通常でもOK)
スクリーン
塗ったところが明るくなる機能。
加算(発光)ほど強く光らないので、ほんのりと明るくしたい時に便利です。
また、うっすら白く霞む性質があるので、青系の色を使うと空気遠近感を表現しやすいです。

元写真の上に新規レイヤーを作成し、レイヤーモードをスクリーンに変更します。
柔らかいふわっとしたタッチで描けるエアブラシを使います。
画面奥に青系の色を塗って空気感を演出します。
空気感を演出したことで、遠近感が強化されました。
現実の風景よりあえて大げさ目に演出するのがコツです!
まとめ 写真加工のコツは『簡略化』と『色味の調整』
情報量の簡略化
画面全体の情報量が同じ状態だと、視線が画面全体に散漫してしまう。
画面の中で最も見せたい部分は描き込みを多くし、それ以外のサブの部分は簡略化して情報量を下げる!
特殊効果の演出
- 光と影を加える 明るい所と暗い所をはっきり分ける。
- 色味を調整する 明るい所と暗い所をはっきり分ける。
- 空気遠近感を演出する
明るい所と暗い所をはっきり分ける。
写真を活用することで、
- 短時間でハイクオリティな背景が描ける
- 頭の中のイメージを表現しやすくなる
というメリットがあります!
特に初めて背景に挑戦する時は、いきなり白紙から描くのは至難の業です……。
そこで写真素材を適切に活用することで、背景の基本技法や描き進め方、効果レイヤーをはじめとした演出の仕方を効率的に学ぶことができるという訳です。
★写真素材を使うのはズルではない
写真はそれ自体ではイラストにはなりません。
写真を貼り付けただけではただのコラージュ画像です。
1枚のイラストとして成立させるためには、
- 効果レイヤー
- 色味を合わせる色調補正
- 素材同士を馴染ませる加筆
などなど、様々な技術や知識が必要になります。
1枚のイラストとして完成させられたのならそれはあなたの立派な画力だし、作品。
ぜひ写真加工やフォトバッシュに挑戦して、背景イラストの世界に踏み込んでみてください!
そして微力ながら、この記事がその第一歩を後押しするキッカケになれば嬉しく思います!
↓他にも背景や写真加工・フォトバッシュに関するメイキング記事を用意してみました。↓


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