という事で今回は、特殊ブラシと写真を活用して簡単に海を描く方法をまとめました。
こんな方におすすめ
- 海や水面が難しいと悩んでいる方
- 手軽に背景に挑戦してみたい方
本記事の内容
- 特殊ブラシを使って海を手描きする方法
- 写真素材を活用して海を描く方法
- 海を描くのに便利な効果レイヤー
はじめに背景を描く上で重要なことがありまして、それは…、
質感を再現できるブラシを使って描く!
ことです。
質感とは、たとえば、
・海であれば ☞ 波や水面の波紋、
・地面であれば ☞ ざらっとした質感や凸凹感、
・森であれば ☞ 密集した葉っぱ
……などなど。
これらを普通のブラシで描くのは限界があります。
そこで背景の質感を設定した特殊ブラシを使うと、緻密で描き込みの多い背景を描くことができるわけです!
また、写真素材を使うのもコツ。
これはフォトバッシュという、主にゲーム・映画業界のコンセプトアート領域で使われている技法。(一度は見たことあるかもですが、めちゃくちゃリアルで緻密なイメージボードとか)
写真素材を下地にして描くことで、0から手描きするより、手軽に・短時間で完成度の高いイラストを仕上げられます!
写真の活用方法や効果レイヤーの基本についてはこちらの記事もどうぞ~!


つまり適切なブラシを使って描くこと、そして写真素材を適宜活用することで背景を描くハードルがグッと下がります!
この記事では、
- 特殊ブラシを使って手描きする方法
- 写真を活用する方法
の2つのアプローチで、海や水面の描き方を紹介します。
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特殊ブラシで海を描く方法
波の質感を出せるブラシを使います。

❶ 濃い波を描くブラシ
横方向に一直線にブラシを動かすと綺麗な波の影が描ける。
ブラシサイズはかなり大きくすると◎。

❷ 明るい波を描くブラシ
手前はブラシサイズをかなり大きくしてスタンプを押すようにブラシを動かす。
奥はブラシサイズを小さくしてジグザグを描くようにブラシを動かす。
ちなみに↑のブラシはこちらの技法書に特典として付いてるブラシです。
ブラシ素材集
ゾウノセ (著), 角丸つぶら (著) (ホビージャパン)
この技法書には水面の他にも、葉っぱ・森・樹木・地面・岩・山・草原・雲など自然物やビル・街並み・アスファルト・レンガ・金属など人工物を簡単に描けるブラシが全部セットになってます。
ぶっちゃけこの1冊で大抵の背景が描けるくらい、チートな技法書。
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それではブラシを使って実際に海を描いていきます。
工程は以下の通り。
海を描く手順
- グラデーションで海の下地を作る
- 濃い波を描く
- 明るい波を描く
- 明るい波を描く~その2~
- 反射光を描く
①:グラデーションで海の下地を作る
『手前は濃く暗く・奥に行けば行くほど明るく』遠近感を出していきます。
❶ 1色でベタ塗りした海のベースを作ります。
❷ 海レイヤーの上に新規レイヤーを作成。レイヤーモードを乗算に変更します。
海からはみ出さないように海レイヤーにクリッピングします。
↑レイヤーにピンクの線が付いたらクリッピングが完了した証。
➌ グラデーションツール の「描画色から透明色」というモードを使って海にグラデーションを掛けます。赤い矢印の方向にペンを動かします。
②:濃い波を描く
手前に濃い波を描いていきます。
❶ 上に新規レイヤーを作成し、乗算に変更します。
❷ 濃い波を描くブラシで画面手前に濃い波を描きます。
ブラシサイズを多きめに設定し、横一直線にブラシを1回動かします。
普通のブラシのように何度もタッチを重ねるのではなく、1回でスゥーっと動かすのがコツ。
③:明るい波を描く
水面に光が反射して明るくなった波を描いていきます。
❶ 上に新規レイヤーを作成し、スクリーンに変更します。
❷ 明るい波を描くブラシで画面全体に波の反射を描きます。画面手前から奥にかけて波の大きさを小さくして遠近感を出すのがポイント!
画面手前
☞ブラシサイズを多きめに設定、画面を軽くタッチするような短いストロークで描く。
画面奥
☞ブラシサイズを小さめに設定、横方向のストロークで描く。時々ジグザグに細かく動かすと自然な仕上がりになる。
④:明るい波を描く~その2~
スクリーンレイヤーをもう1枚加えて、波の質感を強化します。
❶ 上にもう1枚スクリーンレイヤーを作成します。
❷ 明るい波を描くブラシで画面全体に波の反射を描き足します。
適宜ブラシを消しゴムモードにして(キーボードの”C”を押したら消しゴムモードになります。)波を削って形を整えていきます。
⑤:反射光を描く
日光に照らされて水面がキラキラと光る様子を表現します。
❶ 上に新規レイヤーを作成。加算に変更します。
※加算(発光)ではないので注意!
❷ 明るい波を描くブラシを赤矢印の方向に1回動かします。画面を撫でるように短くスッとタッチすると綺麗に仕上がります。
➌ ❷のレイヤーを複製※します。変形機能(キーボードのCtrl+T〈MACはcommand+T〉)で複製したレイヤーを移動&サイズ調整します。
※ 複製したいレイヤーを選択した状態でキーボードのCtrl+C〈MACはcommand+C〉を押し、その後Ctrl+V〈MACはcommand+V〉を押すと複製できます。
サイズの調整&いい位置に移動ができたら、キーボードのEnterキーを押して変形を完了します。
さらに反射光レイヤーの複製と移動&サイズ調整を繰り返していきます。
反射光を海全体に満遍なく配置すると綺麗な仕上がりになります。
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これにて完成です!完成図とレイヤー構成はこんな感じ↓
特殊ブラシで海を描くポイント
- 濃い波と明るい波を描く。
- 反射光を描いて光の演出をする。
- 少ないタッチでさっと描く。
写真で海を描く方法
写真で海を描く方法は大きく分けて2つあります。
写真で海を描く2つの方法
- 1枚の写真をイラスト風に加工する
- 写真の一部をパーツとして使う
❶の方法は単純明快!海の写真をそのまま加工して、イラスト風にする方法。
背景初めての方でも割と手軽に描けます。
良い構図の写真を用意しましょう!
❷の方法は、海の写真の一部をイラストに貼り付けて使う方法。
たとえば砂浜のイラストを描いているとして、打ちつける波の部分だけ写真素材を使う…といった具合です。
イラストに合わせて、必要な箇所に最適な素材を貼り付けるので、よりイメージに近いイラストに仕上がります!
◆◆◆◆◆
① 1枚の写真をイラスト風に加工する
まずは海の写真をそのままイラスト風に加工する方法!
そのためイラストに使うことを前提としたイラスト映えする写真が必要です。
今回使うのはこちらの海の写真。
海といえば青色のイメージがありますが、曇りのため全体的にどんよりと暗いです。
効果レイヤーを活用して、鮮やかな青い海に変えていきます。
慣れたら15分くらいで完成できます!

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❶「乗算」で青色の下地を作る
乗算
暗く・濃くできる効果レイヤーです。
影を塗るのに使うのが主な用途ですが、今回のように色味の下地を作るのにも使えます。
元の写真のレイヤーの上に新規レイヤーを作成、レイヤーモードを乗算に変更します。
グラデーションツール の「描画色から透明色」というモードを使って海全体に青色を乗せます。
赤い矢印の方向にペンを動かし、グラデーションを掛けます。
❷「オーバーレイ」で色味を鮮やかにする
オーバーレイ
明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗くする機能。
色味を鮮やかにしたり、特定の色味を強くしたり、全体に特定の色味を乗せたりできます。
一番上に新規レイヤーを作成、レイヤーモードをオーバーレイに変更します。
グラデーションツール の「昼空」というモードを使用。
今回も赤い矢印の方向にペンを動かしてグラデーションを掛けます。
海全体を鮮やかにして、一気にイラストらしい印象にしました!
➌波を加筆する
一番上に新規レイヤーを作成。今回はレイヤーモードは通常でいきます。
白っぽい水色で波を加筆します。
❹空の色を変える
選択ツールで空の部分を囲います。
選択ツールはいろいろ種類がありますが、広範囲を一気に囲うときは「長方形選択」が最適!
塗りつぶしのボタンをクリックして空を塗りつぶします。
曇り空だったので、濃い水色にします。
上に新規レイヤーを1枚作成、空を塗りつぶしたレイヤーにクリッピングします。
これで空の部分だけに描くことができ、海の部分にはみ出さなくなります。
↑レイヤーにピンクの線が付いたらクリッピングが完了した証。
先ほどのグラデーションツール の「描画色から透明色」を使って明るい水色のグラデーションを掛けます。
(おまけ)雲も描く
せっかくなので夏っぽい雲も加筆しました。
雲は海と同様に専用の特殊ブラシを使って描いたり、雲の写真を加工する方法もあります。
↓今回は特殊ブラシで手描きしました。
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写真加工は手軽な反面、すべては元の写真次第!
なので普段から写真を撮る際は、イラスト加工を前提とした映えする構図を意識して撮影すると良いです。
② 写真の一部をパーツとして使う
続いて海の写真の一部をイラストに貼り付けて使う方法についてです!
描いてるイラストに合わせて、必要な箇所に最適な写真素材を貼り付けるので、より自分のイメージに近いイラストに仕上がります!
★今回の作例では、港の海の部分に別の波の写真を貼り付けることで、よりイメージ通りの海イラストに仕上げていきます!
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❶ 波の写真を貼り付ける
元の画像です。曇天で色彩が地味なのと、もっと海っぽいイメージにしたかったので、水面に別の波の写真を貼り付けます。
波の写真素材の集め方!
写真素材はフリー素材サイトを活用しましょう。
一番のオススメはPixabayというサイト!登録とかなしで無料で利用できます。
素材は商業利用OK・クレジット表記不要です。神かな
・適当に「港」と打ち込んで素材を検索します。
・今回は下の写真を使うことにしました。
保存した写真素材を開き、選択ツールで使いたい部分を囲みます。
囲む形が複雑な場合は、ペンで描くように自由に選択範囲が作れる「投げなわ選択」が便利!
選択できたら、Ctrl+C〈MACはcommand+C〉でコピー、イラストの画面に戻ってCtrl+V〈MACはcommand+V〉で貼り付けます。
サイズや形を変えたい時は変形機能(Ctrl+T〈MACはcommand+T〉)を押して変形
この作業を繰り返して海全体に波の写真パーツを貼り付けていきます。
❷ 水面を鮮やかにする
水面が暗いと感じたので、鮮やかな青色にします。
上に新規レイヤーを作成し、レイヤーモードをオーバーレイにします。
エアブラシだと広範囲にふわっと色を塗れるので最適です!
➌ 波を加筆する
このままの波だとまだまだ写真の状態なので、ブラシで加筆してイラストらしくしていきます。
加筆は、上に通常レイヤーを作成して進めていきます。
↓の不透明水彩ブラシで描いてます。
(ちなみに[硬さ]の項目をレベル3にすると、エアブラシほど柔らかくなく、かつペンほど硬くない絶妙な描き味になります!
どんどん加筆していきます。
- 写真が粗くなってる部分
- 情報量が細かい所
- パーツ同士のつなぎ目
- 白い明るい波
を重点的に加筆していきます。
◆◆◆◆◆
これにて完成です。
1枚の写真をそのまま加工することに比べて、好きなパーツを好きな場所に使える分表現の自由度が高いです!
まとめ ブラシと写真の活用で複雑な海を攻略
特殊ブラシで海を描くポイント
- 濃い波と明るい波を描く。
- 反射光を描いて光の演出をする。
- 少ないタッチでさっと描く。
広い範囲を塗りつぶす時はボールペンではなくマジックペンを使うように、描く背景に適した特殊ブラシを使うことで、背景の難易度はぐっと下がります!
写真で海を描く2つの方法
- 1枚の写真をイラスト風に加工する
- 写真の一部をパーツとして使う
写真を質感を表現するパーツとして活用することで、背景のクオリティを劇的にUPさせることができます!
◆ブラシや写真素材はズルではない
ブラシや写真はそれ自体ではイラストにはなりません。
1枚のイラストとして成立させるためには、
- ブラシのタッチ
- 効果レイヤー
- 素材同士を馴染ませる加筆
などなど、様々な技術や知識が必要になります。
1枚のイラストとして完成させられたのならそれはあなたの立派な画力だし、作品。
ぜひ素材や写真を上手く活用して、背景イラストの世界に踏み込んでみてください!
そして微力ながら、この記事がその第一歩を後押しするキッカケになれば嬉しく思います!
↓他にも背景や写真加工に関するメイキング記事を用意してみました。↓
https://kuro-navi.com/category/draw-background


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