という事で今回は、効果レイヤーの使い方を写真加工を通して解説します。
効果レイヤーや色調補正機能はイラストのクオリティを上げる一番の近道!
そして写真加工は、効果レイヤーと色調補正を習得するのに最適な方法です。
こんな方におすすめ
- 効果レイヤーの使い方を知りたい方
- 写真加工を使って背景に挑戦したい方
本記事の内容
- 効果レイヤーや色調補正機能の活用法
- 写真を背景イラストっぽく加工する方法
僕は2018年末から本格的に背景を描き始めましたが、取り組んだのは、
- レタッチ(写真をイラスト風に加工する技法)
- フォトバッシュ(写真を素材として背景を描く技法)
です。
実はこの2つ、効果レイヤーや色調補正を学ぶには最適な方法です。
そして結論から言うと、効果レイヤーと色調補正を極めることは、デジタルイラストの画力向上に最も直結すると言っても過言ではありません!
これらを使いこなせるようになると、イラストの表現の幅が格段に広がります。
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(こちら約1年前の背景…。なんか頑張ってなそれっぽい事やってます…;)
↓
(現在の背景。効実はほとんど効果レイヤーと色調補正の組み合わせで作ってます。)光のや影の表現、効果レイヤーの使い方、色調補正、素材の活用方法などなど。
効果レイヤーや色調補正の使い方のご参考になりますと幸いです!
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主要な効果レイヤー
効果レイヤーは、レイヤーの合成モードを変えることで、光や影、色味の変化といった様々な設定を加えたレイヤーのことです。
↓レイヤーウィンドウから設定することができます。
★赤い四角で囲ってるのが、普段よく使う効果レイヤー達です。
描いたイラストの上に効果レイヤーを加えることで、
- 明るくしたり、
- 暗くしたり、
- 色味を変えたり、
- 特定の色味を強く/弱くしたり、
…etc
と、自由自在に補正をすることができ、より理想のイラストに仕上げることができます!
まずはよく使う効果レイヤーの機能と活用例を紹介します。
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効果レイヤー用途①:明るくする
加算(発光)
塗った箇所が光ったように明るくなります。
太陽や火、電球など強い光の表現に用います。
スクリーン
塗った部分が明るくなります。加算発光ほど光りません。
白く霞むような発色になる為、主に空気遠近感の演出に用います。
効果レイヤー用途②:暗くする
乗算
塗った箇所が暗くなります。主に影を描く時に使います。
多分一番よく使うレイヤー。
焼き込み(リニア)
塗った箇所が暗く・濃くなります。
「乗算」と比べて使った色味が強く乗るので、色がくすむないです。
肌の影などに使うと、血色が悪くならず便利◎!
効果レイヤー用途③:色味を変える
オーバーレイ
「スクリーン」と「乗算」を同時に行い、明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗くなります。つまりコントラストが強化され、発色が鮮やかになります。
色味を鮮やかにしたり、特定の色味を強くしたり、全体に特定の色味を乗せたりできます。
ソフトライト
明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗くなります。「オーバーレイ」を控えめにした版です。
画面全体など、広い範囲に効果を加えるのに向いてます。
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効果レイヤーは種類が多く混乱してしまうので、はじめは上記で紹介した効果レイヤーに絞って使い方をマスターしていくとスムーズです!
写真加工が効果レイヤー習得に適する理由
https://twitter.com/Kuromuu_9696/status/1240242605654331392
もし僕が初心者に戻って、効果レイヤーの勉強を0から始める場合は間違いなく写真加工に取り組みます。
写真加工が効果レイヤーの習得に適する理由を解説します。
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理由①:光源や環境が捉えやすい
そもそも「色」とは、物体に反射した光が目に入ることで認識することができます。
【光源からでた光が ⇒ 物体に反射し ⇒ 反射した光が目に入ることで、「色」を感知します。】
つまり色とは、周囲の光源・環境(場所や時間帯)があって初めて成り立つもの。
写真(背景)は、光源の位置や周囲の環境が決まっているので、効果を入れる場所や使う色に迷わないのが最大のメリットです。
逆によくある失敗で、無地の白背景にキャラを描くと、光や影の位置がチグハグになってしまうことがあります…。
背景が無い絵は、光源の位置や周囲の環境を頭の中で設定しながら描き進める必要が有るので、実は難易度が高いです。
理由②:イラストを用意する必要がない
効果レイヤーはあくまで” 色味を補正する機能 ”。
そのため、そもそも元となるカラーイラストが必要になります。
(特に絵の練習を始めて間もない頃は、0からカラーイラストを1枚描くだけでも大変です汗)
写真加工の場合、すでに元となる写真があるため、効果レイヤーの練習だけに集中できます!
また、写真をイラスト風に加工する工程の大半は効果レイヤーによる加筆。
そのため練習の過程で背景イラストをたくさん完成させることができ、モチベーションに繋がるのも魅力の1つですね!
理由③:ブラシの使い方を覚えられる
状況に応じて最適なブラシを使い分けることが、イラストの完成度を上げる上で欠かせません。
ブラシには、質感、伸び、下の色との混色…など細かな違いがあり混乱しがちですが、まずは ” 硬いブラシか・柔らかいブラシか ” で使い分けると良いでしょう。
硬い・柔らかいって何?
ここでは便宜上、
- 硬い
………ブラシの輪郭がハッキリしている - 柔らかい
………ブラシの輪郭がふわっとしている
ことを表現しています。
具体的には、
★広い範囲を塗る時…
柔らかいブラシを使用。
ブラシサイズを大きくする。
★細かい箇所を描く時…
硬いブラシを使用。
ブラシサイズを小さくする。
上記の使い分けをすることで、様々な効果を適切に入れることができます。
魅力的な背景イラストに仕上げるためには様々な色・濃さ・タッチの効果を入れる必要があります。
写真に多種多様な効果を加える過程で、適切なブラシの使い方を学ぶことができます。
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以上が効果レイヤーの基礎です。
次の章では実践として、実際の写真加工のメイキングを紹介します。
効果レイヤーで写真をイラスト風に加工する
今回の作例はこちら。作画ステップは大きく分けて3つです。
写真加工でやること3つ
- イラストらしい色味にする
- 光の演出をする
- 最終調整をする
※今回は効果レイヤーの活用法がメインのため、キャラの描画については割愛します。
※適宜他のイラストの例も出しながら解説します。
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ステップ①:イラストらしい色味にする
☞ このステップでやること
- ソフトライトで色味を鮮やかに。
- スクリーンで空気遠近感を出す。
元となる写真をCLIP STUDIOで開きます。
※イメージしやすいように、今回は予め描いておいたキャラを置いてます。
☞ 撮影した日が曇りだったため、全体がどんよりと暗く、地味な色合いをしています。
完成イメージは朝日の差す道路なので、まずは色味を鮮やかに加工していきます。
ソフトライトで色味を鮮やかに
ソフトライト
明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗くするレイヤー。
色味を鮮やかにしたり、特定の色味を強くしたり、全体に色味を乗せたり……
広範囲に効果を加えるのに向いてます。
❶ 元写真の上に新規レイヤーを作成。レイヤーモードをソフトライトに変更します。
❷ 日光が当たる階段部分や左奥の道路には黄色やピンクを、右奥の木陰や階段脇など影になる部分は青色を塗ります。
(↓塗った箇所が分かりやすいようにレイヤーモードを通常にして表示してます。)
広範囲を満遍なく塗るのに適したエアブラシを使用。(クリスタに入ってるやつです。)
ブラシサイズを適宜大きく/小さくしながら描いていきます。
エアブラシのポイント
ブラシ先端の硬さとブラシ濃度の設定に注目!
画面全体を塗る時は、
・ブラシの硬さはレベル3にする
・ブラシ濃度も60~70%くらいまで落とす
と塗りやすいです!
色味が鮮やかになりました!
スクリーンで空気遠近感を出す
スクリーン
塗った部分が白く霞んだように明るくなるレイヤー。
画面全体が柔らかい雰囲気になり、また空気遠近感を演出できます。
❶ 一番上に新規レイヤーを作成。レイヤーモードをスクリーンに変更します。
❷ 遠景(右奥の木陰と左奥の道路)に青色を塗って、空気遠近感で青く霞んだような演出をします。
(↓塗った箇所が分かりやすいようにレイヤーモードを通常にして表示してます。)
使用するブラシは先ほど同様、広範囲を満遍なく塗れるエアブラシです。
写真と比べて、全体が柔らかい印象になりました。現実の風景と比べて少し大げさ目に青色の空気遠近感を入れることが、イラストっぽくなるコツです!
ステップ②:光の演出をする
☞ このステップでやること
- 加算(発光)で光を演出する。
- 加算(発光)で陽射しを描く。
加算(発光)で光を演出する
加算(発光)
塗った箇所が光ったように明るくなります。
太陽や火、電球など強い光の表現に用います。
❶ 一番上に新規レイヤーを作成。レイヤーモードを加算(発光)に変更します。
❷ 階段、階段横の壁、左奥の道路など日光が当たる部分に黄色を薄く塗ります。
(↓塗った箇所が分かりやすいように背景を暗くしています。黄色い部分がこの工程で塗った箇所です。)
使用するブラシは先ほど同様、広範囲を満遍なく塗れるエアブラシです。
全体に光が入ったことで明るい印象になりました。次の工程では太陽の陽射しを加えます。
※レイヤーの不透明度が100%の状態だと明るくなりすぎるので、不透明度を少し下げました。
■ レイヤーの不透明度は赤い四角で囲った部分で調整できます!

加算(発光)で陽射しを描く
❶ 一番上に新規レイヤーをもう1枚作成、レイヤーモードは一旦通常のまま進めます。
❷ 画面左上から差し込む朝日を描いていきます。陽射しは太さや長さに変化を付けて描くのがコツです。
エアブラシを使用します。
陽射しのシルエットがぼやけ過ぎないように、ブラシの設定を少し調整してます。
・ブラシの硬さはMAXのレベル5
・ブラシ濃度は70%くらい
➌ 描き終わったら陽射しのシルエットをぼかします。
ガウスぼかしとは?
フィルターメニューの一つで、シルエット(輪郭)をぼかす機能です。
設定画面でどれくらいぼかすかを自由に調整できます。
フィルターメニュー ⇒ ぼかし ⇒ ガウスぼかしよりガウスぼかしの設定画面を開きます。
ガウスぼかしの設定画面です。目盛を右に動かすほどぼかしが強くなります。
★画面右下の〔プレビュー〕に✓が入っていることを必ず確認してください。ここに✓が入っていない場合、画面上でぼかし具合を確認できないです。
目盛を左右に動かして丁度いいぼかし具合になるよう調整します。
良い感じになったら〔OKボタン〕を押して完了です。
❹ 最後にレイヤーモードを加算(発光)に変更。明るすぎたのでレイヤーの不透明度を25%に下げました。
陽射しを描く前と後の比較図です。
陽射しが描かれたことで、ぐっとイラストらしい印象になりました!
陽射しをうまく描くコツ
画面の中で大・中・小3つの大きさを描くとバランスが良いです。
まずメインの大きな陽射しを描いた後に、周囲に小さい陽射しを描きます。
★キャラを描く場合は、キャラに視線を誘導するように配置するのも◎です。
(おまけ)画面の隅を暗くするビネット効果
画面の隅を少し暗くします。ビネット効果と呼ばれ、画面を引き締め、視線が中央に集まる効果があります。
使うのは乗算レイヤー。
乗算
塗った箇所が暗くなります。主に影を描く時に使います。
❶ 一番上に新規レイヤーを作成。レイヤーモードを乗算に変更します。
❷ 左上は陽射しがあるため、今回は画面下と画面右上の3隅を暗くします。
(↓塗った箇所が分かりやすいように背景を白くしています。黒い部分がこの工程で塗った箇所です。)
エアブラシで暗い灰色を塗ります。
塗り重ねすぎると必要以上に暗くなるので、軽い筆圧でさっと塗るのがコツです。
➌ レイヤー不透明度100%だと目立ちすぎるので、不透明度を30%くらいに下げました。
ステップ③:最終調整をする
最後に仕上げとして画面の色味を微調整します。
この工程を色調補正と呼びます。
☞ このステップでやること
- トーンカーブ機能を使って色味を調整
- オーバーレイで色味を微調整
トーンカーブ機能で色味を調整
トーンカーブは、画面の明暗の調整やRed(赤)・Green(緑)・Blue(青)の各色味を強く/弱くできる機能です。
★トーンカーブレイヤーは〔レイヤーメニュー ⇒ 新規色調補正レイヤー ⇒ トーンカーブ〕から作成できます。
左上のタブをクリックすると、調整するチャンネルを選択できます。
RGBのチャンネルでは画面の明暗を調整できます。
グラフを上方向に曲げると明るくなり、逆に下方向に曲げると暗くなります。
Red、Green、Blueの各チャンネルにおいては、グラフを上方向に曲げるとその色味が強くなり、逆に下方向に曲げるとその色の補色が強くなります。
★補色とは?
カラーサークルでその色の真反対にある色のことです。
赤なら水色、緑ならピンク、青なら黄色…といった具合。
トーンカーブの詳しい使い方や活用例は↓の記事もご参考までに~!
参考記事⇒【イラストの完成度が劇的に上がる!?】トーンカーブの使い方を解説(編集中)
今回のイラストでは、
- RGBチャンネルで暗さを強調して画面のメリハリUP
- RedとBlueのチャンネルで赤みと青みをUP
させました。
オーバーレイで色味を微調整
最後にオーバーレイで色味の微調整を行います。
オーバーレイ
「スクリーン」と「乗算」を同時に行い、明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗くなります。つまりコントラストが強化され、発色が鮮やかになります。
色味を鮮やかにしたり、特定の色味を強くしたり、全体に特定の色味を乗せたりできます。
オーバーレイは塗った色味が強く乗るので、最後の微調整に最適です。
❶ 一番上に新規レイヤーを作成、レイヤーモードをオーバーレイに変更します。
❷乗せる色は好みでOKです。僕は青~紫っぽい色味が好きなので、大体いつも青紫系でまとめてます。
全体を青紫色で塗り、階段や道路など直射日光が当たる部分のみ黄色を塗りました。
一応理論的な要素を後付け( )すると……、
■暖色と寒色の関係
- 赤系の暖色は膨張色と呼ばれ、大きく・手前に出たように感じさせる。
- 青系の寒色は後退色と呼ばれ、小さく・奥に引いたように感じさせる。
これは目の錯覚を利用した、色彩遠近法と呼ばれる技法です。

という感じ。
階段に暖色の黄色を塗ることで、手前の階段が大きく目立ち、逆に周囲を寒色の青色で囲むことで、奥に広がる奥行きを強調……できてる気がします(笑)
色を塗り終わったらレイヤーの不透明度を14%にして完成です。
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最後に左上に最近景として葉っぱを追加して完成です!

まとめ 効果レイヤーは画力アップの近道
効果レイヤーの3大用途
❶ 明るくする
- 加算(発光)
…明るい光を描くとき使用。 - スクリーン
…空気感遠近感を演出するとき使用。
❷ 暗くする
- 乗算
…影を表現するとき使用。 - 焼き込みリニア
乗算と比べて色味が乗るので肌の影に最適。
➌ 色味を変える
- オーバーレイ
…色味を鮮やかにしたり、特定の色味を強くしたり、全体に特定の色味を乗せたりする。 - ソフトライト
…オーバーレイの控えめ版。広範囲を塗る時使いやすい。
効果レイヤーはかなりの種類があるので、いきなり全てマスターするのは骨が折ります。
(…というか僕自身、未だによく分からないマイナーなレイヤーもあります;)
まずは用途が分かりやすく、かつよく使う上記6つの効果レイヤーから習得するのが最適。ぶっちゃけこの6つのレイヤーだけで大体のイラストが描けると思います!
効果レイヤーを学ぶのには写真加工が最適と書きましたが、具体的なやり方については下の記事にまとめてみました。
効果レイヤーの練習や、背景に興味ある方は併せて読んでみてください!
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また、Twitterでもイラストの解説・メイキングを呟いたり、イラストやポートフォリオに関する質問・相談などを受け付けてます!もしよければ覗いてやってください~