という事で今回は、写真加工と特殊ブラシを用いて複雑な森のイラストを手軽に描く方法をまとめました。
こんな方におすすめ
- 写真加工を使って背景イラストに挑戦したい方
- 複雑な森や草木を手軽に描いてみたい方
本記事の内容
- 森の写真を使って背景イラストに加工する手順
- 森の作画に便利な特殊ブラシの使い方
今回の作画のステップは大きく分けて3つです。
- イラストらしい色味に変える
- 加筆 ~写真特有の細かい情報量を削る~
- 効果演出 ~ライティング&色調補正~
写真や特殊ブラシを効果的に使うことで、0から手描きで描き起こすのと比べて、手軽に・短時間で完成度の高いイラストを仕上げることができます。
一見難しそうな緻密な森や草木のイラストを手軽に描いてみたい方は勿論、効果レイヤーや色調補正などの便利なデジタル機能について知りたい方のご参考になりますと幸いです!
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森は写真や特殊ブラシを使えば簡単に描ける!
全絵師が一度は思ったことあると思います。
(ぶっちゃけ僕も思います汗)
草木や森は、自然物の中でも特に細かく複雑で、描くのがとても難しいモチーフです。
質感・無数の葉っぱの描き込み・葉っぱや枝同士の自然な重なり…etc
手描きで1枚1枚描く方法も勿論あるのですが、それだと膨大な時間が掛かります。
また非常に難易度が高く、歪な形になってしまったり、ぼやけて汚くなってしまう危険もあります。
【よくある失敗例の画像】
そこで写真や特殊ブラシを使うことで、0から手描きするよりも短時間で手軽に、精密な描写ができる訳です。
解決法①:特殊ブラシを使う
1回のタッチで複雑な葉っぱを描画できる特殊ブラシを使うことで、葉っぱを描く難易度がぐっと下がります。
具体的には、下の動画のような感じ。
【集合葉っぱGIF動画】
葉っぱのシルエットを何パターンか作成し、それらをブラシのペン先に設定することで、スタンプを押す感覚で、複雑な葉っぱを一度で描くことができます。
具体的な作成方法を下記にまとめました。
【オリジナル葉っぱブラシの作成画像】
❶新規キャンバスを作成する。
❷葉っぱの素となるシルエットを描きます。自然な葉っぱになるよう、3~4パターン用意するのがおすすめです。
※ブラシは、Gペンなど、パッキリとしたシルエットが描ける硬いブラシを用います。
❸用意した葉っぱのシルエットを素材として登録します。
※この工程は、②で用意した3~4種類のシルエットごとにそれぞれ行います。
❹CLIP STUDIOにデフォルトで用意されている「樹木ブラシ」をベースに、先ほど登録した素材を用いてブラシを作成していきます。
「樹木ブラシ」を選択した状態で、右クリック⇒〈サブツールの複製〉より複製し、こちらをカスタマイズします。名前を「葉っぱブラシ」としました。
❺「葉っぱブラシ」のツールプロパティの右下にあるスパナマークを押して、〈サブツールの詳細パレット〉を開きます。
❻左の項目より【ブラシ先端】を選択し、〈素材〉タブをクリックします。
▼マークをクリックし、先ほど登録した4つの素材を呼び起こします。
4つの素材を設定できたら、晴れてブラシの完成です!
※デフォルトで設定されている素材は、右下のごみ箱マークをクリックして削除します。
ブラシのサイズを随時変えることで、より自然な葉っぱの質感を再現することができます。
また、描きながら適宜使用色を変えることで、より深みのある自然な色合いの葉っぱを描くことができます。
解決法②:写真を使う
写真をイラストのベースに使うことで、描き込みが多いイラストを短時間で描くことができます。
元の写真は情報量が多く細かすぎるため、上からブラシで加筆して葉っぱを簡略化していく作業を行います。
ここでいう「情報量」とは・・・= 描き込みの量
人の目は、情報量が多いところに視線が行きます。
写真の状態だと、質感や細かな汚れ、模様など、画面全体の情報量が多すぎるため、視線が散漫してしまいます。
そこで、キャラなど最も見てほしい要素が目立つように、不要な情報量を削ることで、より訴求力のある魅力的なイラストに仕上がります。
具体的な制作工程を下記にまとめました。
①今回は遠~中景でよく使う一般的な広葉樹をイメージしました。
②先の解決法①で作成したような特殊ブラシを用いて、上から加筆を行います。
この時ブラシのサイズを適宜変えたり、周囲から色をスポイトすることで、単調な塗りつぶしにならないようにするのがコツです。
③効果を演出して、イラストらしい鮮やかな印象にします。
「加算(発光)」レイヤーを作成し、エアブラシなどで明るくします。
反対に葉っぱの下部には、「乗算」レイヤーで暗くします。
また他にも、木の幹や枝なども写真素材を組み合わせることで時短できます。
【緑の社の画面右上の木の枝の作画メイキングの画像】
描き込みの情報量や、破綻なくモチーフを描けているかは、イラストの完成度を左右する重要な要素です。
少ない手数&短時間で精密な描き込みができて、手軽にイラストの完成度を高められる点が、最大のメリットです。
◆◆◆◆◆
複雑で細かい質感が要求される葉っぱは、手描きだけで描き起こすのではなく、写真や特殊ブラシを効果的に使うことで、効率よく完成度を上げることができます。
初期からある程度のクオリティのイラストが描きやすい方法なので、描くモチベーションが高まるという意味でも、初心者の方にも最もオススメしたい技法であると考えています。
1:イラストらしい色味に変える
まず最初の下地作りとして、イラストらしい魅力的な色味に加工していきます。
普通に撮影した風景写真は、イラストに使うには少し地味な色味をしています。
アニメの背景を想像してもらうと分かりやすいのですが、特殊効果を用いて、現実世界の風景よりも鮮やかな色味にしてあげることで、イラストらしい魅力が一段と増します。
1-①.空気感を演出する
「スクリーン」レイヤーで青系の色を加えることで、画面上部と奥に空気感を出します。
スクリーン
下のレイヤーの色と重なった部分が明るくなります。
白く明るくなるため、空気感の演出などに活用すると便利です。
遠くの景色ほど空気の影響を受けて青白っぽく霞みます。この性質を活かして距離感を表現することを空気遠近と呼びます。
背景イラストでは少しオーバーに空気遠近を演出することで、画面に奥行きを作ることができます。
1-②.色味を鮮やかにする
「ソフトライト」レイヤーで全体を鮮やかな発色にしていきます。
ソフトライト
明るい色同士を重ねるとより明るく、暗い色同士を重ねるとより暗く表示されます。つまりコントラストが強化されることで、発色が鮮やかになります。
草木には緑系、太陽の日差しが当たる祠部分には黄色系、橋下の影には青系を用います。
また画面右上の木にも青系を薄く入れて、” 空気が澄んだ森林感 ”を強調しました。
1-③.影を描く
「乗算」と「焼き込み(リニア)」レイヤーで全体に影を入れていきます。
ソフトライト
明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗くなります。つまりコントラストが強化されることで、発色が鮮やかになります。
「乗算」は色味が黒くくすむ性質があるので、日が直接当たる祠周辺のみ「焼き込みリニア」を使っています。
2つのレイヤーともに言えますが、あまり塗り込み過ぎると画面が暗くなりすぎます。
ですのでブラシ濃度を50~60%くらいに設定した柔らかいエアブラシで、ふわっと一筆で塗るのがコツです。
1-④.前景の草木を描く
手前に新たに木を追加します。
ピントがぼけたオブジェクトを一部映すことで、画面手前にも空間が有るように感じさせ、奥行きを強化できます。カメラなどでよく用いられる手法です。
葉っぱや草木は前項で紹介した素材ブラシを使う他、フリー素材サイトを活用すると便利です。
今回はtextures.comというフリー素材サイトを活用します。
トップページの下に素材のカテゴリーが有るので、『自然』カテゴリーを選択します。
画面左に枝、植物、木…etc、といった小カテゴリーが有るので、任意の小カテゴリーから画像をダウンロードします。
textures.comはPNG形式で画像を保存できるのでオススメです。
PNG形式は背景が透明な画像ファイルなので、貼り付けや加工がしやすいです。
1-⑤.太陽の日差しを描く
画面左上部より差し込む日差しを描きます。
レイヤーは「スクリーン」と「加算(発光)」の2つを用います。
加算(発光)
塗った箇所が明るく光ったようになります。
太陽など環境光の表現に用いると便利です。
「スクリーン」で日差しを描き、続いて「加算(発光)」でふわっとした光の演出を加えます。
こちらも塗りすぎると明るくなりすぎて白飛びするので、ブラシ濃度50%前後の柔らかいエアブラシで描きます。
なお後の工程でガッツリと明暗の強化をするので、この段階では光のベースを作る、くらいの軽い感覚でOKです。
1-⑥.色味を柔らかくする&統一する
写真特有のパッキリ感を減らし、イラストのような柔らかい雰囲気にします。
「ソフトライト」と「比較(明)」レイヤーで全体を塗りつぶします。
比較(明)
下のレイヤーの色と、比較(明)で塗った色とを比較し、明るい方の色を採用してそその色を発色させます。
つまり影など暗い部分がふわっとした明るさに補正され、画面全体が柔らかい発色になります。
使用する色ですが、青系もしくはイラストのメインカラーを使うことでうまく馴染ませることができます。
1-⑦.前景の植物を追加する
画面右上に枝を追加します。
手順は、下記の通りです。
①手描きで木の幹をラフに描く。
②textures.comより葉っぱの素材を何種類はダウンロードして、配置する。
③「乗算」で暗くした後に、「加算(発光)」で光をふわっと入れる。
工程1-④と合わせて、すだれのように画面上部に配置することで、空間の遠近感に加え、視線が画面中央に集まるようにします。
2:加筆 ~写真特有の細かい情報量を削る~
続いて、写真を上から手描きで加筆することで、写真特有の細かすぎる情報量を削ったり、物体のシルエットを見栄えよく整えていきます。
基本的に遠景と近景を中心に情報量を削り、後にキャラを配置する中央部分見せ場の中景を目立つようにしていきます。
2-①.橋と祠を加筆する
岩の細かい質感や汚れ、祠の屋根に積もった落ち葉、祠内部をシンプルにしていきます。
後の工程でガッツリ効果を入れていくので、結構ガッツリ塗りつぶしてOKです。
元写真の色を取得しやすいように、一旦色味の効果を非表示にした状態で作業します。
スポイトツールの活用
スポイトツール→[表示色から取得]を選択します。
キーボードの[I]もしくは、ペン本体の[Altボタン]を押しながら画面をタッチすることで、タッチした箇所の色を取得することができます。
※なお、[レイヤーから色を取得]にした場合は、今選択しているレイヤーに描画されてる色のみ取得できます。
ブラシはCLIP STUDIOの素材サイトでダウンロードできるWaterColorSAIを使用します。
ブラシの設定は上記の通り。
水彩系のブラシで、筆圧によって塗りながら混色できます。色同士が混ざり合うので自然に馴染ませることができます。
※逆にGペンやカブラペンなどの[ペンツール]は、アニメ塗りのようなパッキリしたべた塗りになるので、写真の加筆には不向きです。
❶地面
後の工程で木漏れ日を加えるため、床のタイルの継ぎ目や岩の質感をシンプルにならしていきます。
また、手すりには経年劣化と雨風による汚れが見えます。イラスト的にはあまり綺麗に見えないので、こちらも上から塗りつぶしていきます。
❷階段
遠景かつ後にキャラを配置する場所であるため、このままではキャラが埋もれてしまいます。質感や石段の継ぎ目をシンプルにしていきます。
べた塗りに近い状態まで塗りつぶしました。
③祠
最遠景にしては細かすぎる落ち葉が目立つので、思い切って塗り潰してしまいます。
また柱の木目、賽銭箱の汚れ、幟や布を消して、全体的にシンプルにデフォルメさせました。
2-②.池周辺を加筆する
続いて橋下の池と、池周辺の岩や雑草を加筆していきます。
ここは最終的に影を入れて暗くしていく部分ですが、写真の状態だとぽつぽつと明るい箇所があり、このままだと影を入れても悪目立ちしてしまいます。
水面の光の反射や、岩の質感、岩に光が当たってる部分を中心に加筆しました。
★ちなみに塗りつぶしてのっぺりし過ぎたかなーと感じた時は、加筆レイヤーの不透明度を90~80%に下げることで元写真の質感がうっすらと浮かび、自然な感じになります。
人の視線のカラクリ
人間の目は、明るい所や描き込みの情報量が多い所に視線が行きます。
最終的にキャラを配置する画面中央部は描き込みを多くしたり、重点的に光の演出を施す。
逆に画面4端など脇役部分は暗く、質感も削ってシンプルにする。
このように画面内に明暗の緩急を付けることで、主役部分がより目立つようにコントロールできます。
ちなみに効果を表示したらこんな感じです。
(左)が写真の状態、(右)が加筆後の状態です。
このように、暗くする箇所は徹底的に暗くして、画面の明暗のメリハリを付けるのがコツです。
2-③.草木を加筆する
続いて全体の草木を加筆していきます。
先の【草木は写真や特殊ブラシを使えば簡単に描ける!】の項目で解説した方法の通り、特殊ブラシを使って描いていきます。
ちなみに今回使ったブラシは1回のタッチで↑のような質感を描画できます。
➊森
奥の森を加筆していきます。
先の【1:イラストらしい色味に変える】で作った効果レイヤーを表示させながら描いていきます。
スポイトツール[表示色から取得]で画面から葉っぱの色を取得しつつ、特殊ブラシでスタンプを押すような感覚で加筆していきます。
※スポイトツールはキーボードの[I]、もしくはペン本体の[Altボタン]を押しながら画面をタッチすることで、タッチした箇所の色を取得できます。
特殊ブラシは数回スタンプするごとにブラシのサイズを大小するのがコツです。緻密で変化のある葉っぱが描けます。
また、池周辺の葉っぱの密度が少なかったので、手描きで加筆を加えています。
画面端の目立たない箇所なので、葉っぱはシルエットのみ描いていきます。
★特殊ブラシは葉っぱが密集した箇所や、葉っぱ1枚1枚の細かな質感を描かない遠景には効果バツグンですが、個別で葉っぱを描く場合は手描きの方がやりやすいです!
➋階段横の茂み
階段横の茂みもシンプルにします。
写真の状態だと、濃い緑~明るい黄緑まで色数が多く、ごちゃごちゃしてます。
最終的にこの茂みの前には、キャラを配置して光の効果も加えたいのですが、このままでは茂みが悪目立ちしてしまい、キャラが沈んでしまいます。
赤丸あたりの中間色をスポイトして塗るとバランスよくなります。
❸右の葉っぱ
画面右の草木を加筆します。
元写真の状態だと所々葉っぱが消えたり欠けたりしていて見栄えが悪いです。
太陽の光が当たる部分なので、明るい黄緑になっている部分から色をスポイトして描いていきます。
★遠景なので、葉脈などの細かなディテールは描かず、葉っぱや茎のシルエットのみを描いていきます。
3:効果演出 ~ライティング&色調補正~
最後の工程です。もうひと踏ん張りです!
なんか最後の工程がラスボス感出てますが、実際にやることはシンプルに2つです。
- 光と影の効果を加える(明暗の強化)
- 効果レイヤーと色調補正レイヤーで色味をいじる
特に明暗の強化は、背景イラストの完成度を手っ取り早く高める方法です。
例えば最近のアニメやゲーム背景でも、鮮やかな光の表現を加えるのが主流です。
先の項目で『人の目は明るい箇所に視線が集まる』とお話ししましたが、明暗の差が出ているだけで、見てほしい所/脇役の所のメリハリが自然と出るため、結果的に訴求力のあるイラストに仕上がるという訳です。
3-①.光と影を加筆する
今回のイラストの印象を決める最も重要な工程です。
(逆に言うとここさえクリアすれば勝ち確でもあります。)
今回想定したシチュエーションは以下の通り。
- 鬱蒼とした森
- 森の中にポツンと建つ祠
- 木々から差し込む日差しで幻想的な雰囲気を出す
これらの雰囲気を出すために、暗い所はより暗くし、日差しや木漏れ日で光の演出を施すことで、明暗の差を大きくしていきます。
❶影
新規レイヤーを作成し、「焼き込みリニア」にします。
エアブラシ(上図のブラシ設定)で、影を塗ります。
あまり何度も塗り重ねると暗くなりすぎるため、ふわっとしたタッチで撫でるようにさっと塗るのがコツです。
次にもう1枚新規レイヤーを作成し、「ハードライト」にします。
グラデーションツールに紺色を設定し、赤矢印の方向にグラデーションを掛けます。
❷日差し
[1-⑤.太陽の日差しを描く]で描いた日差しのレイヤーを清書していきます。
エアブラシ(上図のブラシ設定)で、日差しの形を整えていきます。
[1-⑤.太陽の日差しを描く]の段階だと形がパッキリとしすぎているので、ふわっとしたシルエットになるように整えます。
エアブラシのコツ
日差しは右上から左下に向けて1回のタッチでさっと流すように描くのがコツです。
エアブラシは、ブラシサイズが小さいほどシルエットがはっきり濃くなる性質があるので、ブラシサイズは大きめに設定するといいです。
その後、日差しのレイヤーを複製し、明るい水色に変更します。
色の変更方法は、変更したい色を選択した状態で、編集メニュー ⇒ [線の色を描画色に変更]をクリックすることでできます。
2枚のスクリーンレイヤーが重なることで一部明るくなりすぎたので、複製した方のレイヤー不透明度を58%に下げました。
➌木漏れ日
新規レイヤーを作成し、「加算発光」にします。
不透明水彩ブラシ(上図のブラシ設定)で、橋に木漏れ日を描きます。
はじめに大まかな形を描いた後、一部繋げたりアウトラインを削って形を整えていきます。
ちなみに通常、ブラシは選択中の色で描けますが、キーボードの[C]を押すことで、消しゴムモードに変わります。[C]をもう一度押すと元に戻ります。
➍光の粒子
エアブラシツール→[スプレー]で光の粒子を描きます。
いわゆる光に反射した埃で、アニメの背景でよく見るあれです。
新規レイヤーを作成し、レイヤーモードを「加算発光」にします。
画面左下の橋上と祠の日差し部分(上図赤丸の部分)に描きます。
[スプレー]ブラシは通常のブラシのように”塗り重ねる”というよりは、”ポンッと短くタッチする”感覚で使うのがコツです。
今回は粒子が広範囲に描かれすぎた為、[変形]ツールで若干サイズを縮小し、ベストポジションに移動させました。
(※[変形]は【縦横比を維持】に✓が入った状態で行う。)
★光の粒子は小さいですが、画面の何もない空間に間を持たせられるのでよく用いる演出です!
3-②.キャラを描く
いよいよキャラを描いていきます。
▲僕はいわゆる『厚塗り』のスタイルをとっており、基本的に ①塗りで大まかな素体(シルエット)を描く。⇒②パーツ毎に細部を整えていく。という流れで描いていきます。
それでは各パーツ毎に見ていきます。
❶髪
はじめに毛束をざっくり描きます。まずは大雑把に髪の流れを決める感じでOKです。
その後それらをベースに、太い毛束を描き→徐々に細い毛束を整えていきます。
後ろ髪も同様のやり方で進めていきます。
まずはベースとなる太い束をざっくりと描き→徐々に毛束をつけ足し→分割させたり・細い毛束を描き加えていきます。
後ろ髪の髪留めですが、キャンバスの空きスペースで描いてから、移動ツールで髪の所に移動させるとやりやすいです。
完成したらレイヤーを複製、奥側の髪の所に移動させます。
※髪の描き方についてまとめた解説も作ってみたので、参考になると幸いです!
〈関連記事〉
https://kuro-navi.com/how-to-make-hair
❷顔
1. はじめに白目を描きます。線ではなく図形で形を描くことで、バランスが崩れにくくなります。
2. 次に白目のアウトラインに沿ってまつ毛を描きます。白目の形に沿って線を引くだけなので、角度がありバランスが崩れやすい奥の目も簡単に描けます。
3. 瞳も直接丸を描くように描くと綺麗なシルエットを作りやすいです。
また、手描きで描くのが難しい場合は、図形ツールで楕円を描画→移動ツールで目の位置に配置→目からはみ出す部分を消しゴムで消す。 という方法もアリです。
4. 瞳が描けたら、黒目や目のハイライトなど細部を描き込みます。
上記の『白目から描いていく方法』につきましては、参考資料を作成しましたので併せてご参照ください。
➌着物
着物は先に紹介したWaterColorSAIブラシで描いていきます。
塗りながら色同士が混ざり合うので、濃淡を付けやすく、自然に馴染ませられるのが利点です。
まず影を大雑把に描き、それをベースに徐々に影やしわを整えていきます。
大きな影を描く時はブラシサイズを大きくし、細かい影やしわを描く際はサイズを細くするなど、ブラシサイズを適宜変えるのがコツです。
黒い着物の形が大方完成したら、襟元→襟元のエプロンと進めていきます。
こちらも、まずはシルエットを大雑把に描き、徐々に詳細を描いていくやり方です。
❹袴とエプロン
使用ブラシは着物同様WaterColorSAIブラシです。神ブラシ!
まず袴を整えていきます。
最初に赤色単色でシルエットを描き ⇒ 線を引いて分割 ⇒ 裾に段差を付けていきます。
次にエプロンのフリルとしわを描いていきます。
フリルに関してはいきなり塗りからいくより、最初に大まかなラフ線を引いてから塗ると形を作りやすいです。
袴の裾にもフリルを描きます。0から手描きで描いても良いのですが、先ほど描いたエプロンのフリルをコピペして活用しちゃいましょう!
時間短縮になります!
厚塗りのコツ
- 最初に大雑把にシルエットを描く。
- シルエットをベースに徐々に細部を整えていく。
◆◆◆◆◆
こんな感じでキャラの作画が完成しました。
3-③.キャラを背景に馴染ませる
続いてキャラを背景に馴染ませていきます。
キャラを描いただけの状態では背景から浮いてしまっているので、キャラに影や光の効果を加えていきます。
工程は全部で4つです!
❶影を全体に入れる
最初にガッツリと影を入れます。
新規レイヤーを作成、レイヤーモードを「乗算」にします。
キャラの周囲が青っぽい影になってるので、それに合わせて青色で塗ります。
使用ブラシはエアブラシ(設定は下図の通り)。
キャラの左上にから光が当たってる為、光と影の関係を意識しながら塗ります。
具体的には、足元や下半身は濃く、上にいくにつれて薄く塗るのがポイント。
エアブラシが難しい場合は、グラデーションツールを使うのも良いです。
全体に影を入れられたら、キーボードの[C]を押して、エアブラシを消しゴムモードに。顔周りだけ消します。
その後不透明水彩ブラシに持ち替えます(設定は下図の通り)。
キーボードの[C]をクリックし、不透明水彩ブラシを消しゴムモードに。一部影を削って木漏れ日を再現します。
これにて影入れは完了です。
❷環境光を演出する
新規レイヤーを作成、レイヤーモードを「ソフトライト」にして、光の効果を入れていきます。
使用ブラシはエアブラシです(設定は下図の通り)。
環境光とは?
地面の照り返しなど、周囲の他の物体から受ける光ことです。
夕日に照らされた物体が赤く輝くように、環境光に照らされた物体は、環境光の色の影響を受けます。
まずキャラの頭部に、左上から差す太陽光の効果を演出します。
明るい黄色でふわっと1回のタッチで入れます。あまり塗り重ねすぎると明るくなり過ぎるので注意です!
続いて足元にも効果を入れます。
物体は周囲の光を反射します。そして橋から反射する光は、周囲の緑の影響を受けています。
なので青緑系の色を選択し、こちらも1回のタッチでふわっと入れます。
さりげなく色味が乗るように仕上げます。
➌環境光を強化する
新規レイヤーを作成、レイヤーモードを「ハードライト」にします。
前項で加えた環境光の効果をより強くしていきます。
今回も下記のエアブラシを使います。
キャラの足元に青系の色をふわっと入れます。
森の中や草木が作る影は青緑っぽい発色をします。現実世界の風景では中々肉眼で視認できませんが、イラストでは影部分に青緑っぽい効果を大胆に入れると良いです。
このように、あえて効果を大げさに演出するなど、” イラストならではの嘘 ”を織り交ぜる事が背景イラストのコツだと思ったりします。
キャラの顔部分には薄いオレンジ色を入れます。
オレンジ色を肌に入れることで血色がよくなり、鮮やかな印象になります。
また、キャラの顔にオレンジ~黄色系の色を入れることで、顔をより目立たせることができます。
■補色
補色とは互いの色を最も目立たせる色の組み合わせのことです。
今回のイラストは全体的に青緑が占めています。下図のカラーサークルのように、青の反対色であるオレンジ~黄色を使うことで、顔がより引き立つようになります。
■暖色と寒色の関係
- 赤系の暖色は「膨張色」と呼ばれ、大きく・手前に出たように感じさせる。
- 青系の寒色は「後退色」と呼れ、小さく・奥に引いたように感じさせる。
これは目の錯覚を利用した、色彩遠近法と呼ばれる技法です。
暖色であるオレンジ~黄色を顔部分に入れることで、面積の小さい顔を自然と目立たせ、目を引くことができます。

❹ハイライトを加える(リムライトと木漏れ日)キャラクターにハイライトを加えて、キャラを際立たせます。
まず新規レイヤーを作成し、レイヤーモードを「加算発光」にします。
日差しが当たる側にリムライトを加えていきます。
リムライトは物体の輪郭に沿ってハイライトを加えることで、背景からキャラクターを切り離す効果があります。
キャラクターが背景に埋もれるのを防ぎ、キャラクターの存在を引き立てることができます。
続いて新規レイヤーをもう1枚作成、レイヤーモードを「覆い焼発光」にします。
[❶影を全体に入れる]でキャラに描いた木漏れ日の上をなぞり、木漏れ日部分を光らせます。
◆◆◆◆◆
背景から浮いていたキャラに効果を加えたことで背景に馴染みました。
3-④.キャラの背後に効果を加える
続いてキャラの背後にも効果を加えていきます。
キャラの下に効果レイヤーをいくつか加えることで、キャラを背景とより調和させ、そしてより際立つようにしていきます。
❶落ち影を描く
キャラの下に新規レイヤーを作成、レイヤーモードを「乗算」にします。
キャラクターの落ち影を描きます。周囲の色に合わせて青緑系の色をチョイスします。
❷リムライトを加筆する
キャラの下に新規レイヤーを作成、レイヤーモードを「加算発光」にします。
先の[3-③.キャラを背景に馴染ませる]でキャラにリムライトを加えました。
リムライトとは、物体の輪郭に沿ってハイライトを加えることで、物体が背景に埋もれるのを防ぎ、存在をより引き立てる技術。
今回は先に入れたリムライトが少し弱く感じたので、もっと強化する目的でやりました。
明るめの水色を選択し、キャラの外周に沿ってハイライトを加えました。
※ペンツール→[Gペン]や[カブラペン]など細く・パッキリした線が引けるブラシを使用すると良いです。
➌キャラの背後に補色を入れて目立たせる
キャラの下に新規レイヤーを作成、レイヤーモードを「ソフトライト」にします。
キャラの背後に緑色の補色となる赤系の色味を加えてることで、キャラがより目立つようにします。
もう一度補色の復習です。
■補色
補色とは互いの色を最も目立たせる色の組み合わせのことです。
今回のイラストは緑色がメインカラー。背景全体を緑色が占めています。
そして緑色の補色は赤色です。
キャラの周辺に補色の赤色の色味を薄っすら乗せることで、自然とキャラが浮き立つようにします。
色味を鮮やかにする効果がある「ソフトライト」レイヤーを使うことで、さりげなく赤みを帯びるようにできます。
使用ブラシはエアブラシ。
上の写真のようにキャラの周辺にふわっと色を塗ります。あまり塗り重ねすぎると赤みがキツくなるので、筆圧は弱目でさっと塗るのがコツです。
◆◆◆◆◆

3-⑤.最終仕上げ
いよいよ最後の工程です。イラストをより理想の仕上がりにしていきます。
色味や明暗、彩度などを調整することを、イラストの色調補正と呼んでいます。
❶陰影の最終調整
目的:画面の明暗の差を強化する
影にあたる部分を少し暗くすることでイラストの明暗を強くしました。
新規レイヤーを作成し、レイヤーモードは「焼き込みリニア」に。
日差しの光まで暗くなってしまうといけないので、[3-①.光と影を加筆する]で描いた日差しのレイヤーよりも下にレイヤーを作ります。
森の色に合わせて、濃い深緑をエアブラシでふわっと入れます。
(↑塗った所が分かりやすいように赤くしてます。)
あまり塗り重ねず、軽い筆圧でさっと塗るのがコツです。
❷画面の4隅を暗くする
目的:画面中央に視線が集まるようにする
ビネット効果(もしくは単にトンネル効果)と呼ばれるもので、トンネルの出口の明るい部分に自然と注目が集まるように、周囲を暗くすることによって、画面中央に視線を集めることができます。
身近な例ですと、LINEカメラのトイフィルターが分かりやすいかもしれません。
一番上に新規レイヤーを作成し、「乗算」にします。
暗めの青色を画面4隅にエアブラシでさっと入れます。
あくまでさり気なく!1回のタッチでさっと入れるのがポイントです。
➌色調補正レイヤー
目的:最終的な微調整
-300x192.jpg)
-300x218.jpg)
最後にイラストの色味を調整します。
調整に使うのは
- 「比較(明)」レイヤー
- トーンカーブ
まず一番上に新規レイヤーを作成し、「比較(明)」にします。
上図の通り明るいピンクで全体を塗りつぶし、レイヤーの不透明度を5%にします。
⇒イラストは全体的に緑色です。緑色の補色である赤~ピンクの色を全体に被せることで、画面の色味に変化が作れておもしろいです。
次にトーンカーブという色調補正機能で、イラストの色味を微調整します。
レイヤーメニュー ⇒ [新規色調補正レイヤー]より、トーンカーブレイヤーを作成します。
トーンカーブは、画像の濃淡を調整したり、赤(Red)・青(Blue)・緑(Green)の各色味を調整することができる機能です。
トーンカーブは簡単にイラストの雰囲気を変えたり、理想の色味に調整することができる便利機能です!
トーンカーブをはじめとした色調補正は下の記事で詳しく解説してます。
〈関連記事〉

◆◆◆◆◆
以上で完成となります。
完成イラストがこちら。

-300x220.jpg)
森は写真や特殊ブラシを使って描くのがコツ
写真素材や特殊ブラシを使うことで、クオリティが高い森や草木を描くことができます。
森や草木を手軽に描く方法
- 特殊ブラシを使う
葉っぱの質シルエットを設定した特殊ブラシを使うことで、スタンプを押す感覚で、複雑な葉っぱを1回で描くことができます。
- 写真を使う
写真をイラストのベースに使うことで、描き込みの情報量が多いイラストを短時間で描くことができます。
写真や特殊ブラシは、自分の描きたいイメージを表現するのをサポートしてくれる便利な方法です。
写真加工は、初期からクオリティの高いイラストを描きやすいという点でも、特にこれからはじめて背景に挑戦したいと思っている方にとって最適。
1枚の写真をイラストの状態に加工していく過程で、
- 効果レイヤーの使い方
- 質感の出し方
- 色調補正機能
- 素材の活用方法
など、様々な” デジタルイラストを描く技術 ”を習得でき、イラストの画力ランクアップに繋がると保証します!
この記事が、背景に挑戦するキッカケになり、少しでも「背景=難しいもの」という負のイメージを壊す一助になれれば幸いです。
その他の背景の描き方についてもまとめてみました。
https://kuro-navi.com/category/draw-background


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